写真集のはなし6

 

工藤あけみ写真集
工藤あけみ・神渡信兵

A4版;68ページ
出版社:三和出版
シリーズ名:SANWA MOOK 8
発売日:1988/5/15
サイズ:29.8×21.3×0.7cm
ジャンル:ヌード写真集

「奇書」といっていい。
この写真集を語るサイトでは、、
女性の容姿には触れないようにしてきた。
モデルと写真家とスタッフの努力でできた写真集に対し、
私の主観で容姿について語るのは、まあ不遜だろうなあという思いからである。
が、なのである。
この写真集に関してはそこから始めざるをえない。
表紙が…売り上げを決めるはずの表紙がおかしい。

美人とは言えない。
正直、不美人にしかみえない。
ただそれは、モデルの工藤あけみ氏の問題ではない。
彼女はこの前年年末の「GORO」1987年12月10日号の激写のモデルなのだ。
ええ、あの紀信の激写。

「工藤あけみ GORO」で画像検索をしていただきたい。
デートに最適な埠頭と思しき場所で、柔らかな陽射しが差し込む中、
ふわっとしたオフホワイトのカーディガンを羽織った彼女が、
彼氏に呼ばれたのか、振り返った瞬間を…
つい満面の笑みを浮かべている表情を、
スナップ写真風に切り取った風体、
いや「THE 激写」という工藤あけみ氏が確認できるはず
(うまく文章化できてますでしょうかね)。

一方この写真集の表紙は。
まず、化粧っけが感じられない。
何なら、吹き出物まで映り込んでいるように見える。
そのうえ、顎を引かせたポーズでアルカイックスマイルを浮かべた彼女を
下から写真を撮る。
えっと何となく「心霊写真」とか言って
下から懐中電灯を当てたようなポーズに似ている。
そりゃ、美人には見えにくいです。
おまけに、シャツinのでかいブルマスタイル。
ちょっとどうかしている
(これも画像検索でどうぞ)。

写真家の神渡信兵氏は有名な人とは言えない。
国立国会図書館サーチによれば、
同一人物と思われる神渡信平名義で7作品しか確認できない。
寡作の人だ。
ではあるけれど、女性写真集の進化を語る時には外せない。
特にこの写真集は。

確認できうる限り、
これが意図的に採用されたブルマ姿が表紙の写真集なのだ。
前回、セーラー服がエロ化された行く過程を若干触れた。
長い時間と多くの写真家とあまたの女性モデルで少しずつ発展してきた。

一方、ブルマに関してはどうやら違うようだ。
ここまで、ブルマに関して思い込んでいる写真家は
基本的にいなかった。
どっちかというとテニスウェアのほうがよほどに使われている。
神渡信兵氏もそうだったように見える。
単に「二泊三日」での撮影のため持ち込んだ衣装の中に
なぜだかブルマがあったようにしか見えない。
だって、表紙の上半身は単なるTシャツであり、体操服ではないのだもの。
実際、写真集の中にブルマは5カットのみである。
写真集のほとんどのカットは制服だし、ワンピースだし、
ショートパンツルックだし、水着だし。
こちらは、綺麗に撮影していますよ、全く。

ところが、である。
多分に日本に戻って現像し、編集に至り、
彼と編集人は何事か気付いたのだろう。
表紙、裏表紙ともにブルマ姿が採用してしまう。
特に綺麗に撮れていないにもかかわらず。

そして、写真集業界のセーラー服に次ぐアイテムが登場してしまう。
1988年の秋からは、ブルマ姿がありふれた世界になっていく。
これは、なんていうかそういう変な記念碑塔的作品である。

岡山市で古本屋してます。
よろしくです。