写真集のはなし5

キューティー鈴木写真集「cute」
キューティー鈴木渡辺達生

A4上製版;90ページ
出版社:スコラ
発売日:1994/8/30
サイズ:30.9×23.9×1.4cm

グラビアアイドルがDVDの宣伝を兼ねて、
テレビに出演されているのを、先日見た。
驚いたのは、テレビ画面の彼女とDVDの表紙の彼女があまりに違い過ぎていたことだった。
熊田曜子氏と磯山さやか氏ほどに、顔もスタイルにも差がある。
まあ、修正ソフトを使って、顔や体をいじったのだろう。
とにかく別人だった。

いつごろから女性の写真に対して、
フォトショップ(的)加工を施すようになったのかちょっと考えてみて、
記念碑的作品を思いついた。
21世紀初頭に家電量販店に飾られていた、
パナソニック浜崎あゆみ氏のポップスタンドだ。
そのつるつるの皮膚からは、汗腺も産毛も感じられない。
その完璧なボディラインからは、骨格の限界を感じられない。
浜崎氏のロボットかなと思ったくらいだ。

もう実体としての女性を男性は必要としない時代が来つつあるなあ、
とその時ちょっと思った。
これは、やがて初音ミクであるとかキズナアイとかで
ちょっとだけ実体化されたんじゃないか。
個人的に女性写真集は1980年から2000年くらいがピークで、
その後衰えていくと主張しているのだが、
その理由の一つがフォトショップ(的)修正のせいで、
写真集はから艶めかしさが減少したことにもあると考えている。

さて、キューティー鈴木氏の写真集「cute」である。
私はプロレスを見ないので、彼女のその方面での活躍については知らない。
写真集についてのみしか語れない。
以前から何か気になるなあ、と思っていたがよくわからなかった。
今回良く見つめてみて、理由が分かった。
鼻柱と呼ばれる部分、単純には鼻の下にほくろがあるのだ。
これが、写真の角度によって、
微妙に写ったり写らなかったりが少し実在としての色気を誘う。
1994年は写真があまり加工されていなかったとみる。

そう思えば、顔に別の個所にもいくつかのほくろがある。
それも改めて色っぽい。

良き写真集とは、「彼女とデートに行って撮った風味」とすればやはり傑作だ。
そう言えばあまりウエストがくびれていないのも魅力的だ。
生業としてのプロレスラーの彼女が、
くびれていたんでは惚れてしまう理由がなかろう。

さらに、彼女の職場訪問としての中間のモノクロページも美しい。
プロレス会場の彼女が、美を誇ることなく戦っている様子が写されている。
とりあえずは、加工された写真では女性の、いや人の魅力は伝わらない、
という話でした。

岡山で古本屋しています。
ご自慢の写真集があれば、是非見せてください。
遠くても出かけたいと考えています。