「ピュア! 一日アイドル署長の事件簿」が面白い

「ピュア! 一日アイドル署長の事件簿」が面白い

このクールのドラマはNHKの一人勝ちだった。
通常なら「凪のお暇」が一番のはずなのだが、
NHKに4本、上回る作品がある。

まずは「これは経費で落ちません!」。
中身については、SNS上に莫大に書かれているようなのでここでは触れない。
少し声高には、私たち夫婦にとって『名もなき毒』以降、脇役界NO.1だった江口のりこ氏と、
この世界の片隅に』から脇役界注目No.1の伊藤沙莉氏の共演は夢のようだと
主張しておきたい。
江口のりこ氏の電卓の扱いはすごいよ。

「サギデカ」。
何はなくとも体の動く刑事ものは良い。
やはり、紅茶を注ぐだけで事件が解けちゃいけないよね。
見どころは高齢者がテレビの主要視聴者になったのを反映して、
ニュース・ワイドショー・ドラマが高齢者=絶対善、オレオレ詐欺=絶対悪と描くのを
このドラマで若干崩したこと。
木村文乃氏(刑事)と高杉真宙氏(掛け子)の三回の取り調べシーンは震えた。
もちろん、掛け子は犯罪者なのだがね。

「だから私は推しました」
設定をきっちりつめているのは完璧。
いかにも地下アイドルぽい人選。
メジャーでなく、売れない感じの楽曲と振り付け。
いや地続きで、秋葉原に居そうと思わせるよ。

で一番感心したのは、
「ピュア! 一日アイドル署長の事件簿」
いや、ダメ刑事ものなんてドーヴァー警部以降山のようにある。
それじゃない。
ストーリーは(多分意図的に)、ださださ。
「郷秀樹」氏こと団時朗氏は現在一話出演して殺される役NO.1だが、
ここでもあっさり毒殺されるし、
それも百万回あった毒入りコップの入れ替えトリックだし。

アイドルは売れないものだということを、
現役アイドルたる浜辺美波氏を通じて演じさせたのが、
暗かった私の思春期に記憶に、いやでも突き刺さってしまったのだ。

Wikipediaの「アイドル」の定義は、
『成長過程をファンと共有し、存在そのものの魅力で活躍する人物』だったりするし、
ライムスター宇多丸氏のそれは
『魅力が実力を上回る存在』だったりする。

『存在そのものの魅力で活躍する』という意味では、
うちの娘が真似してる辺りはクリアしている気もするが。
娘はかわいい。うん。

違うんだよ。
まあ、トシちゃん、マッチ、聖子ちゃん、KYONKYONならそうだろう。
でも、アイドルのほとんどは売れない。
成長を楽しむ前に見なくなって(引退してしまって)いる。
魅力を楽しむ前に消えている。
私の高田橋久子氏はどこへいったよ。
徳丸純子氏のレコードは買っただよ。
どうしてくれる?

その海の底にある記憶から見るなら、
このドラマは刺さりすぎる。
解く謎だって、連続殺人じゃなくって、その模倣犯だけ。
何か起きようのない話を書ききったのは、痛かったが感謝している。